養殖ブリ

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養殖ブリ業界に向けた提言  ノルウェーをお手本に 垂直統合型経営体 開発中の技術テーマ

生産量

養殖ブリの県別生産量で上位3県は、鹿児島県、愛媛県、大分県の順です。

養殖ブリ生産量の多い自治体は、鹿児島県長島町、鹿児島県垂水市、愛媛県宇和島市、大分県佐伯市です。近年、宮崎県串間市で急増しています。

養殖漁場地図はこちらからどうぞ。農林水産省の統計(平成25年、2013年)で養殖ブリ類を生産している上位自治体を次に示しています。

生産量200~1,000tの自治体は、広島県大竹市、愛媛県西予市、長崎県長崎市・五島市、鹿児島県南さつま市、南大隅町、肝付町です

生産量1,000tを越える自治体は、徳島県鳴門市、香川県高松市・東かがわ市・さぬき市・直島町、愛媛県愛南町、高知県須崎市・宿毛市、佐賀県唐津市、長崎県佐世保市・平戸市・松浦市・新上五島町、熊本県天草市、宮崎県延岡市、鹿児島県鹿屋市・指宿市です。

 

1980年代には養殖ブリ生産量のほうがノルウェーの養殖サーモン生産量より多かったですが、今ではノルウェーから全世界へ輸出する養殖サーモン生産量は養殖ブリよりも1桁以上も多くなっています。

養殖魚の安全性

養殖業者は、法律で定められた安全な餌、安全な薬品、薬品使用後に一定の期間(休薬期間)を経てから出荷するなど安全性を確保するために努力しています。天然魚では餌由来の寄生虫が宿ることがありますが、養殖魚では管理された餌を用いてい ますので寄生虫の心配はほとんどありません。

魚病等の防止のためにワクチンが開発され、もじゃこの活入れ直後に1尾ずつ投与されています。(ぶり(ブリ属魚類)のα溶血性レンサ球菌症不活化ワクチン、ぶりのα溶血性レンサ球菌症及びビブリオ病不活化ワクチン、イリドウイルス感染症不活化ワクチン(対象魚種:マダイ、ブリ、シマアジ)、ぶり属魚類のイリドウイルス感染症及びα溶血性レンサ球菌症不活化ワクチン、ぶりのイリドウイルス感染症、ビブリオ病及びα溶血性レンサ球菌症混合不活化ワクチン(http://www.yoshoku.or.jp/02howto/wakuchin/参照) 、寄生虫駆除として薬事法で認められたマリンサワーで薬浴することがあります(http://www4.synapse.ne.jp/kg-kansui/htm/closeup/08/oneday/index_3.htm参照) 。定められた休薬期間を経過した後に出荷されます。

海中の生簀網をはじめとして養殖施設に多くの付着物(季節によって貝、海藻等)が付着して生簀内の潮通しが悪化したり、施設の重量が増加して沈下するという弊害があります。付着を防止する安全な付着防止剤が全国漁業協同組合連合会から認定され、養殖業者はそれを使用しています。

養殖施設

養殖は多くの施設が必要となる装置産業です。中小養殖業者は一部の装置は共用します。

多くのブリ養殖業者は約10m角の生簀で飼育しています。赤潮多発地帯を中心に一部の業者が直径20mなどの大型生簀で飼育しています。

生簀

生簀は、 ①側張、サルコロープ、サルコ台、アンカーロープ、 ②方塊、 ③生簀枠、 ④底枠、 ⑤生簀網から構成されます。生簀枠には、小割り/アバ/PEパイプ式があり、生簀網 の素材は、化繊網/金網/亀甲網があります。 網は魚体の成長に伴って大きな網目に替えていきます。

生簀枠 小割方式 アバ式 パイプ式
耐久年数 510 約10 10年以上
特徴 鋼管式トラス構造 フロートのみで小割網を吊り下げる方式
耐久性高、形状保持難
耐久性高・形状保持良
網の素材 化繊網 金網 亀甲網
耐用年数 10年程度 23年程度 10年以上
特徴 網交換して防汚剤に漬け込み可能 重い
台風接近時に曳航して避難可能
網成りの変化が化繊網に比して小さいので魚にストレスを与えない
網交換は難しい

PEパイプ式生簀の概略構成を以下に示しています。このうち、①と③は海面、②、④、⑤は海中にあります。
生簀を設置する漁場の水深、潮流速度を測定して強度を考慮して設計します。

10m角の小割り式生簀。台風接近時などに生簀を移動するような海域に設置する場合には、化繊網より変形に強い金網を使います。鳥害を防ぐために天井網を張ることもあります。

上の写真はマグロ養殖の生簀です。左の写真がPEパイプ式、右の写真がアバ式(場合によっては、船が生簀枠を乗り越えることも可能)です。

左下の航空写真は10m小割り式生簀のブリ養殖漁場例です。右下の航空写真は円形生簀の例です。

種苗

初夏、主に天然のもじゃこ(海に漂う藻に集まっていて、藻は潮流にのって流されていく)を漁獲し、餌付けして海水温が18℃以上になったらブリ養殖場の生簀に入れて3.5キロ(翌年の夏)から5キロ(翌年末)まで飼育します。

もじゃこ販売を専門にしている業者もいます。

ブリの産卵海域は東シナ海といわれ、孵化したもじゃこは海流にのって日本沿岸を北上し、高知県、宮崎県、鹿児島県、大分県、愛媛県、熊本県、長崎県、佐賀県、徳島県、三重県、静岡県でそれぞれ資源保護のため期間 と量を限定して採捕され、餌付けしてから養殖業者が仕入れて生簀に入れます。

マダイ、トラフグ、ヒラメなどに続き、ブリ人工種苗の生産もはじまっています。人工種苗を生産している県について独立行政法人 水産総合研究センターが編纂した「平成25年度 栽培漁業・海面養殖用種苗の生産・入手・放流実績(全国) ~総括編・動向編~」(平成273)から主要な海面養殖魚種を抜き出して以下に示しています(単位:千尾)。 

魚種名 人工種苗生産量(千尾)
ギンザケ 岩手(2,218)、宮城(3,411)
カンパチ 和歌山(295)、宮崎(27)、鹿児島(596)
ブリ 和歌山(119)、長崎(606)、鹿児島(350)
クロマグロ 和歌山(8)、長崎(14)、大分(1)、鹿児島(13)
マダイ 和歌山(13,351)、香川(2,680)、愛媛(8,267)、熊本(1,300)、宮崎(696)、 福井(100)、長崎(710)、大分(83)、鹿児島(175)、沖縄(120)
トラフグ 長崎(4,832)、愛媛(671)、熊本(550)、和歌山(379)、福井(82)、大分(30)、三重(10)

親魚の産卵時期を自然界より半年ほど早め、孵化した人工種苗を生簀で飼育するケースも出てきています。ただし、その頃のほとんどの海域の海水温は18℃より低いことが難点です。

この方式を採用すると、天然モジャコから飼育する場合と比較して3ケ月ほど早く成長させることができます。早期成長が実現することで、出荷可能時期が拡大し、赤潮発生時期前に出荷可能、秋に輸出サイズまで成長するので加工場稼働率向上、出荷までの期間短縮(設備稼働率、資金回転率)などの効果が期待できます。

養殖ブリの成長に応じ、販売先の意向や養殖業者の思い(品質、コスト等)で適切な餌を選択して給餌されます。餌の種類には、生餌(冷凍のイカナゴ、サバなど)からモイストペレット(MP)、配合飼料(EP)があります。

配合飼料の原料となる魚粉価格が上昇しています。魚粉の代替品の開発が進められています。

養殖場の海水温が下がると摂餌量が減るので成長は遅くなります。冬場の水温が高い漁場は早く大きく育てる点で優位な点は他の海面養殖に共通しています。

マダイ養殖では自動給餌機が普及しています。しかし、ブリ養殖では自動給餌機は開発段階です。

価格推移-周期的変動

夏場のブリ流通量が減少すると価格は上昇し、冬場は天然と養殖ブリの流通量が増大すると共に競合する魚種が多いので下落を繰り返しています。

下の図(築地市場の統計=正確には「東京都中央卸売市場 市場統計情報」)で、「ぶり」は天然もの、「はまち(養殖)」が養殖ブリを意味します。