養殖ブリの輸出

生産調整  水産物の輸出  米国の水産物市場

養殖ブリ業界に向けた提言  ノルウェーをお手本に 垂直統合型経営体

冷凍ブリの輸出量

財務省貿易統計に2008年から「冷凍ブリ」が独立して集計されるようになりました。年々、輸出量は増加してきました(財務省貿易統計から)。しかし、 輸出量増大に伴い輸出平均価格(円/kg)は低落傾向でした。2013年秋以降、国内価格の上昇に連動して輸出価格も上昇しています。 幸い、円安と重なりドル換算価格ではほとんど変動していません。

輸出価格 左:円建て、右:ドル建て

年間約4千トンの冷凍ブリが博多港から米国向けに輸出されています(2013年、2014年、財務省貿易統計から)。 輸出先と国内での在庫量、他魚種との競争、価格などの要因で毎月の輸出量が大きく変動しています。

生鮮ブリの輸出

冷凍ブリの他に年間1,000トン程度の生鮮品(フィーレ、ロイン等)が米国に空輸されています。養殖ブリの主な産地が四国、九州ですので、福岡空港から直行便がないこともあり他空港を経由して週1~2回の頻度で西海岸、東海岸に輸送されます。

生鮮ブリの対米輸出量は毎月100トン程度でほぼ一定しています。輸出価格は国内の取引価格を反映して変動しています。2012年1月、輸出手続きの際に記述する統計番号が変更になりました。輸出業者の誤記のためか、1月と2月の生鮮輸出量が急増しました。

冷凍ブリの輸出先

冷凍ブリ輸出先のほとんどは米国です。第2位は香港です。米国の消費者は、「ブリの旬は冬」という概念を植え付けられていません。そのため、通年で冷凍ブリを召し上がっています。

米国向けのブリの原料は6キロサイズと大きく、脂質に富んでいますので米国の高所得層に好まれます。このように大きなブリは1月から2月まで待たないと成長しません。もしかしたら、脂質が豊富過ぎて米国向け冷凍ブリは日本人の口にはあわないかもしれません。

米国向けのほとんどの冷凍ブリ製品は、変色を遅らせるために「一酸化炭素処理」(日本国内向けと米国を除くほとんどの国向けには禁止されています)しています。小売店で冷凍ブリを購入し、自宅の冷凍庫で保管・解凍して賞味する習慣のある高所得層の方は、色変わりしないということで逆に不安をもたれる傾向になっています。そのため、一酸化炭素処理ではない別の手法で変色を遅らせる冷凍ブリの需要も根強いものです。

ブリ輸出拡大の可能性

生鮮・冷凍を問わず養殖ブリ加工品を米国、EUに輸出するためには、国内の加工場で米国向け・EU向けのHACCPを取得する必要があります。EU向けより米国向けHACCP取得のほうが少し緩やかです。米国の取引業者の資格によっては、HACCP取得前でも輸出できる道もあります。

冷凍ブリ輸出全量と米国向け輸出量の割合をみていると、対米割合は減少傾向です。すなわち、他国向けの販路が少しずつ開拓されていることを示しています。

個々の国への輸出量は米国向けに比較してまだ少量です。しかし、東南アジア向けが急増し、欧州、カナダ向けが着実に増加しています。2015年、わすかですがノルウェーにも輸出されるようになりました。

全生鮮ブリの輸出量に占める対米割合は冷凍ブリと比較して低下傾向に拍車がかかっています。