水産物の輸出実績

米国で日本産水産物のほとんどは日系食品商社を介してレストラン、小売店等へ販売されています。日系食品商社は、米国全土をカバーしているわけではありません。

日本産食料品の主な需要は、在留邦人(外務省海外在留邦人数調査統計によると北米で50万人弱)、日系人(全米で100万人以上)、日本人観光客、知日派の方です。これらの方が多いハワイ、西海岸、東海岸に日系食品商社は販売網を展開しています。

日本人ではない方々が経営している日本風の飲食店も増えています。これらの店舗の需要も期待できるでしょう。

水産物の輸出先

日本からの水産物輸出額(財務省貿易統計)の8割はアジア向けです。

地域別の輸出商品例

地域特徴
アジア
  • 中国、タイ、ベトナム、韓国の順に水産物輸出額が多い。これらの大部分は加工用、中華料理の食材と推定できる。
  • 中国向けの輸出額は北米(ほとんどは米国向け)を上回る。
  • 北米を除く地理圏への輸出額は中国、タイ、ベトナム、韓国を下回る。
  • 香港も主に中国へ中継されるものと推定できる。
  • 主に食用として輸出されるのは、中国、香港、韓国、台湾、シンガポール向けと推定できる。例として、ほたて、あわびなどが推定できる。
米国
  • 冷凍フィーレの対米輸出は急増したが、生鮮・冷蔵の輸出量は停滞している。これは、冷凍品のほうが保管・管理が容易であり、生鮮・冷蔵品のように購入者が仕入れてから3枚卸作業が不要で、売れ残りリスクが低いからであろうと推定できる。
  • ほたて貝の輸出先はアメリカと中国がそれぞれ約3割を占めている。
欧州
  • 財務省貿易統計によると、日本からの輸出金額(2012年)の上位3魚種は、ホタテ(8.5億円)、鑑賞魚(8.5億円、平均価格は食用水産物と比較して数倍から数10倍)、ぶり(1.6億円)であった。
  • ホタテの輸出先上位は、オランダ、フランス、ベルギーの順で、平均価格は1,000~1,650円/キロであった。なかでも、オランダ向けは量が多くて高額であった。
  • ぶりの輸出先上位は、オランダ、ドイツ、フランス、デンマークの順で、平均価格は1,300~1,500円/キロであった。

米国で水産物が輸出されるまでの推移

米国向けに主産物が輸出されるまでに長い年月を経ています。

水産物輸出のトリガとして考えられる要因

要因備考
1邦人需要        日系移民(米国市場の場合)
          ↓
日系企業の進出→在留邦人増→日本料理店進出→日本食材需要
2日本からの観光客増(所得増、円高)
3日本料理の普及ひとり当たりGDP、購買力のある人口の多い地域
4現地料理用食材中華料理向けの干あわび、なまこ等(東南アジア向け)
5来日客の増加アジアから日本への来日客の急増
日本食ファンの米軍関係者
6水産加工原料日本が加工品を引き取ることを条件に中国に輸出
規格外鮮魚の中国、韓国へ輸出
(理由:わが国の人件費が高い・辛い仕事を嫌って人が集まらない)
7タンパク源養殖用餌料に回る冷凍魚(サバ、イワシ等)を食用として輸出
8国家戦略ノルウェーのサーモン

禁輸の東日本産日本酒が来日中国人観光客の土産として人気(朝日新聞、2014-5-7)